葬儀は、誰もが一度は通る人生の節目です。これは、人が罪を背負った時から、誰一人として免れることのできないものとなりました。それだけに、私たちはこの葬儀を、慎重かつ大切に取り扱っていく必要があります。
この連載では、右のような意識を土台として、幾つかの事柄についてお話をしてきました。実際の対応に関しては、おそらくその場になってみないと感覚が分からないかもしれませんが、概要を頭に入れておいてくだされば、少しは違うだろうと思わされています。同時に、葬儀に込められている理念については、もう一度考え直しておいて下さい。良い葬儀が営まれるかどうかは、様々な対応が的確であったかどうか以上に、そこに込められている心によります。多少の不手際があったとしても、関わる者たちが心から臨んでいるならば、それを通して、遺族自身も、参列者も、共に主を崇めて、悲しみの時を、なお祝福の時として過ごすことができるのですから。
この連載は、「時の終わり？」という変わった題名を付けて、書いてきました。それは、死というのは人にとっての終わりであるのかどうか、という大きな問題を踏まえての題名でした。今、改めて問い直してみたいものです。死は、人にとって終わりですか。それとも、違うのでしょうか。
輪廻の思想は、死を終わりとは告げません。死は、再び生まれ直して、新たな人生をやり直す、その途中に位置するものということになります。でも、やり直すと言いましたが、この思想に基づいてもなお、人は前世の記憶を止めていて、今度はしっかりやろう、と考えるわけではないのですから、同じ過ちを繰り返すのが関の山。釈迦は、こんな流転は苦しみでしかない、と考えて、そこからの脱却を求めましたが、なるほど、とも思います。
聖書は、もっとはっきりと言います。人は今の人生を精一杯に生きるだけで、もう一度ということはありません。やり直しはなく、再挑戦もない。だからこそ、「人は蒔いたものを刈り取ることになる」という御言葉も、私たちに大きく迫ってくるのです。死はやはり、その人の生涯に区切りをつけ、それを問う、重大な終わりの時です。だから葬儀に出席するとき、私たちは自らの歩みをも考えさせられるのです。
その一方で、「…？」という記号が意味するように、死は一切の終わりではないのです。つまり、続きがある。神が私たちを救ってくださったときに与えられたものが、確かないのちとか、真のいのちと呼ばれずに（こういう名称も意味深いものなのですが）、永遠のいのちと呼ばれていることも、その一端を示しています。その先には、今の歩みよりもさらに大きく力強い日々が待っているのです。天国については、聖書自体がその様子を事細かに記してはいないので、それほど詳しいことは分かっていません。ただ、そこが今の世において私たちの抱えている様々な問題から解放された、満ち足りたものであることは確約されています。
私は、天国での日々を楽しみにしています。とは言っても、具体的にあれこれと計画を練っているわけではありません。また、今の人生を放棄しているわけでもありません。ただ、これだけは言えると思います。この世の人生はけっして長くはない。考えていることのすべてが成し遂げられる訳ではない。だが、天国は永遠です。今は今を精一杯に生きて（先があるからと言って、また先に比べて微々たるものだからと言って、今の時間を捨て去ってしまうのは愚かな話です）、後は天国に行ってからのお楽しみ。それは下手な例えをするなら、長い休みを前にした学生のようなものかもしれません。その幸いがあるからこそ、たゆむことなく生きることもできる。そうではないでしょうか。
両方の意味を込めて、題名に「？」を付けました。死を見つめることが、また、それに関わっていくことが、皆さんにとって、今と後の世での生を深く考えさせるものであることを、心から願っています。やがて主の前に立つとき、私たちは主の前にどのようにして立つことになるのでしょうか。まず、思い浮かぶのは、神のきよさの前で、自らの罪汚れた姿を思い知らされて、主の前にひれ伏すだろうな、ということです。
でもそれは、ただの恐れではなく、また、罰を覚悟する姿でもありません。そんな自分が、それでもなお神のあわれみによって救われ、いのちを与えられていることに、全身全霊をもって感謝する、そういう平伏です。同時に、私たちはそのとき、主に与えられたいのちを歩んできたことによる充実を、満面の笑みと輝きによってあらわすことができたら･･･。成功した人生という表現が許されるならば、このようにそのときを迎えることができてこそ、成功と言うことができるのではないでしょうか。
『わたしはよみがえりです。いのちです。わたしを信じる者は、死んでも生きるのです。また、生きていてわたしを信じる者は、決して死ぬことがありません。このことを信じますか。』 ヨハネ11:25-26
終わり