このページは、毎週の週報に載せているコラムを転載したものです。そのため、内容が教会内の事柄に即して語られている場合もありますので、ご了解ください。
一週間ごとに更新します。
もしもクリスマスがなかったら、と思い浮かべてみる。つまりは、御子が人としてこの世においでになることがなかったら、ということだ。
人は、神が自分たちを深く顧みてくださっていることを知らないままだっただろう。神を、ただの強い相手としか考えず、どうやって対抗しようかと画策するか、無視すればいいとそっぽを向くか、だったろう。自分の抱える課題が深刻だと気づいた人は、孤独の中、絶望に落ち込んだだろう。
神は遠く離れた、ほとんど知り得ない存在のままだっただろう。どうすれば神の機嫌を損ねずに済むかという方策は発展しただろうが、結局のところ正解は見つからずに、さらわぬ神に祟りなしの論に頼るしかないと諦め気味でいたことだろう。神は恐怖の対象にしかならず、だからなおさら、神を打倒することが人類の目標になっていたことだろう。何とも無駄な、意味のないことに必死になっていただろう。
愛するということの意味を、聖書が語るその意味を、知らないままだったことだろう。気に入る相手、思い通りになる相手に対しては好意を抱くけれども、関わりの薄い相手や、それこそ敵を深く顧みることなど、とうていあり得ないままだっただろう。殺伐とした世界が当たり前、だったろう。
ほかの事柄から、神が自分たちにあわれみを掛けているらしいと気づいたとしても、信頼できなかっただろう。敵対する相手を顧みるなどあるわけがないと思い、だから、いくら優しい言葉が語られていても、信用できないと警戒し続けていただろう。たぶん、それで疲れ果ててしまって、どうにでもなれと放り出すしかなくなっていたことだろう。
むろん、今の世の中でクリスマスに関連して存在する様々なものは、必ずしもキリストの到来と結びついているわけではない。でも、神に期待することができずにいたら、心地よきものを生み出していく余裕、ゆとりをはたして持ち得たのかどうか。ありがたいことに、御子はこの世に来られた。その愛を指し示すものとして、具体化するためのものとして、それは起こった。心から喜び、感謝を思う。
（2025.11.30）
